前に進まず、電柱の前で3分目。散歩なのかにおい鑑賞なのか分からない日、ありますよね。でもそれ、問題行動ではなく、犬が散歩を「正しく」やっている姿なんです。あのクンクンという音に込められた話をしてみます。
においを嗅ぐことは、犬が世界の情報を読む方法です。嗅覚は犬の第一の感覚なので、電柱1本が町の掲示板の役割をしています。においを十分に嗅いだ散歩のほうが、同じ距離を速く歩く散歩より、エネルギーの消費とストレス解消に効果的です。
犬の嗅覚受容体は、人の数十倍の規模です。人が目で世界を読むなら、犬は鼻で読みます。電柱に残った他の犬の痕跡から、誰がいつ通ったのか、どんな状態なのか、といった情報を読み取るんです。町の掲示板でありSNSというわけです。
だから、においを嗅ぐ時間をあげない散歩は、人でいえば目隠しで歩く散歩です。運動にはなるけれど、楽しくないんです。
| 項目 | 速く歩く | においを嗅ぎながら歩く |
|---|---|---|
| 体の運動 | 高い | 中くらい |
| 精神的な刺激 | 低い | 非常に高い |
| 疲労度 | 体だけ疲れる | 体と頭が一緒に疲れる |
| ストレス解消 | 普通 | 高い |
ノーズワーク15分は走り30分ぶん疲れる、という言葉があるほど、鼻を使う活動はエネルギーの消費が大きいです。散歩の後、やけにぐっすり眠る日を思い出してみてください。たぶん、においを思う存分嗅いだ日のはずです。うちのグルム(「雲」という意味の名前です)は同じ電柱の前で毎日1分ずつ立ち止まるのですが、30分速く歩いた日より、そうやって20分歩いた日のほうが、家でぐっすり眠ります。
すべてのにおいを待ってあげるわけにはいきませんよね。そんなときは、散歩を区間で分ける方法を使ってみてください。このブロックは自由にクンクンする区間、次のブロックは歩く区間。「行こう」のような合図の言葉を決めておいて出発のたびに使えば、その子も「今は歩く時間だ」と学びます。
ひとつだけお願いがあります。リードをぐいっと引いて断ち切ることだけは、しないであげてください。読んでいる最中の新聞を取り上げるのと同じですから。読み終わるまで少し待ってあげること。それが、犬から見た最高の散歩マナーです。
犬が世界を読む音、クンクン。その時間がもったいなくて作られたアプリなので、お散歩の記録が中心です。今日うちの子がどこをどれだけ読んで回ったのか、距離と時間が日付別に積み重なり、歩いた日には足あとスタンプが付きます。
クンクンでお散歩記録をはじめる →普段の散歩が移動中心だったなら、週に1、2回は「におい専用の散歩」を作ってみてください。目的地なしで、その子が導くままに、止まりたいだけ止まる30分。リードを普段より少し長めに持って、付いていくだけでいいんです。最初はぎこちないのですが、その子がどこを気にしているのか見る楽しさが、思ったより大きいですよ。
雨の翌日が、におい散歩のゴールデンタイミングです。ぬれた地面はにおいが濃くなるので、わんちゃんたちにはお祭りの日。普段なら素通りしていた草むらで長い時間を過ごすのには、理由があるんです。
ただし、すべてのにおい嗅ぎが楽しみとは限りません。不安なときに地面のにおいへ逃げ込む子もいます。見分け方は体です。しっぽが自然で足取りが軽ければ探索、体が低くて耳が後ろに張り付いたまま一か所ばかり掘るように嗅ぐなら、回避のサインかもしれません。後者なら、何が苦手なのか(近づいてくる犬、うるさい工事現場)周りを見回して、その刺激から距離を空けてあげてください。
結局、原則はひとつです。においを嗅ぐことは犬の権利で、いつどこで嗅ぐかの安全だけを人が守ってあげればいいんです。
今日の散歩では、電柱の前のあの3分を少し違う目で見てあげてください。うちの子が世界のニュースを読んでいる最中なんだと。待ってくれる飼い主さんの隣で思う存分においを嗅いだ犬の一日は、間違いなく、もっと豊かです。
この記事は一般的な情報であり、獣医学的な診断に代わるものではありません。愛犬の状態は動物病院にご相談ください。