遠くに犬の姿が見えた瞬間、うちの子の体がこわばって、次の瞬間に爆発する吠え声。お散歩が神経戦になってしまいますよね。この問題の答えは、吠えた後ではなく吠える前、つまり「距離」にあります。
ポイントは臨界距離(吠えが爆発する直前の距離)を見つけて、その外側で良い記憶を積むことです。他の犬が見えたらおやつが出てくる、という公式を臨界距離の外で繰り返し、少しずつ距離を縮めていきます。吠えた後に叱るのは効果がなく、不安を大きくするだけです。
他の犬に向かって吠えるのは、たいてい2つのうちどちらかです。怖いから(あっちに行って)、あるいはうれしいのに近づけないから(遊びたい)。しっぽと体が後ろに引けていれば前者、前のめりになってクンクン鳴きが混ざるなら後者のことが多いです。どちらでもトレーニングの方法は似ていますが、理由が分かると気持ちが変わります。「気性が荒い」と誤解されている子のかなりの割合が、実は怖がりさんなんです。
| ステップ | 方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 距離の把握 | どの距離から反応するかを観察 | 体がこわばる地点がサイン |
| 2. 距離の確保 | 臨界距離の外で他の犬に接触 | 吠える前の状態を保つのがカギ |
| 3. 良い記憶 | 他の犬が見えたらおやつ、消えたら中断 | 「犬=おやつ」の公式を作る |
| 4. 距離を縮める | 数日単位で少しずつ接近 | 失敗したら1段階戻る |
このトレーニングの最大の敵は焦りです。昨日20メートルで成功したからと今日10メートルに進むと崩れます。数週間単位で見てください。そしてトレーニング中に予想外の犬が目の前に現れたら、その日は素直に方向を変えて避けましょう。避けるのは負けではなく、トレーニングを守ることです。うちのグルム(「雲」という意味の名前です)の臨界距離は最初30メートルほどでしたが、その外側でおやつを食べる日が2か月積み重なると、10メートルまで縮まりました。
吠えた後に叱る、リードをぐいっと引く、無理やり他の犬のところへ連れて行ってあいさつさせる。3つとも逆効果です。特に最後は、克服どころか恐怖の再確認になりがちです。怖い対象にいきなり突きつけるのは、人間でいえば高所恐怖症を治すためにバンジー台から押すようなものです。
何か月続けても良くならなかったり、吠えが突進や噛みつきに発展するようなら、そのときはプロのドッグトレーナーに相談するのが正解です。恥ずかしいことではありません。
脱感作トレーニングは進みがゆっくりで、良くなっていることがなかなか実感できません。臨界距離の外でおやつを上手に食べている場面を短い動画でクンクンに上げておくと、投稿ごとに日付が残ります。1か月前の動画の中の距離と今日を比べれば、確実に前へ進んでいます。
うちの子の動画を残す →トレーニング中は、環境の設計が半分を占めます。犬がたくさん行き交う夕方のゴールデンタイムの公園は、トレーニング後半にようやく行ける上級コース。序盤は犬の少ない時間帯(早朝、遅い夜)と、見通しの良いコースを選んでください。遠くから来る犬が早めに見えれば、距離を調節できるからです。路地のように角で突然出くわすコースがいちばん難しいです。
すれ違いが避けられないときの回避テクニックも身につけておきましょう。落ち着いて方向を変え、駐車中の車や花壇を間にはさんで通り過ぎるのです。視界が遮られるだけで反応がぐっと減る子は多いですよ。
怖くて吠える子の目的は、相手を遠ざけることです。ところが吠えると相手の犬は通り過ぎていきますよね(この子の中では「追い払えた」)。吠えが通用したという経験が積み重なる構造なんです。だからこそ、吠えが爆発する前に距離を空けてあげることが大切。吠える前に安全になれる経験が繰り返されると、この子は吠える必要そのものを失っていきます。トレーニングの目標は吠えを我慢させることではなく、吠える理由をなくしてあげることです。
吠える子とのお散歩は飼い主さんの肩身が狭くなるものですが、覚えていてください。その吠え声は悪い子だからではなく、怖かったり不器用だったりするからです。距離を守ってあげるトレーニングが積み重なれば、必ず変わります。うちの子のペースで進めばいいんです。
この記事は一般的な情報であり、獣医学的な診断に代わるものではありません。愛犬の状態は動物病院にご相談ください。