世界中の犬が散歩に夢中なのだと思っていましたが、玄関を出ただけで体が固まってしまう子と暮らしてみると分かります。その子にとって外は遊び場ではなく、ホラー映画なのだと。特に成犬でお迎えした子や保護犬出身の子に多いのですが、大丈夫です。速さが違うだけで、道はあります。
原則はその子が楽でいられる地点から、一マスずつだけ広げることです。玄関の扉を開けたままおやつを食べる、廊下まで、建物の前まで、路地ひとつまで。各段階で楽になるまで、何日でもとどまってください。怖がっているのに引っ張って出るのは、慣らしではなく恐怖の強化です。期間は数週間から数か月、その子が決めます。
社会化期に外の経験が足りなかったか、過去に驚いた記憶があるか、生まれつき慎重な気質か。原因はさまざまですが、共通点はひとつです。この子にとって外は予測のつかない空間だということ。だからトレーニングの目標も「歩かせること」ではなく、「外は安全だともう一度教えること」になります。
| 段階 | 目標 | 次の段階へ進む基準 |
|---|---|---|
| 1. 玄関 | 扉を開けたままおやつを食べる | 扉の音に驚かない |
| 2. 廊下・階段 | 扉の外へ数歩 | においを嗅ぐ余裕が出てくる |
| 3. 建物の前 | 1~2分立っていられる | 体がほぐれ、しっぽが下りてくる |
| 4. 路地一周 | 5分の散歩 | 自分から先を歩く瞬間が出てくる |
| 5. 拡張 | コースと時間を延ばす | その子のペースで |
各段階の武器は、おやつと低い声のほめ言葉です。そして後退も戦略です。バイクの音に驚いて固まったなら、1段階下に下りてまた積めばいいんです。滑り台ではなく階段なので、下りた分だけすぐまた上がってこられます。
引っ張って行く、怖がる対象の前に無理やり立たせておく、そして意外にも、過剰ななぐさめ。その子が震えているときに大げさに抱きしめてなだめると、「怖がって当然の状況なんだ」と確認させてしまうことになります。淡々と平然とした飼い主さんの態度が、最高の安定剤です。大したことないという顔でおやつをひとつあげて、さらっと通り過ぎること。それが技術です。
お隣の子は駆け回っているのにうちの子はまだ玄関、と焦らないでください。比べる相手はよその犬ではなく、先月のうちの子です。先月は扉の音で隠れていたのに今日は廊下まで出られたなら、それが成功です。
慣らしのトレーニングは、一日一日で見ると足踏みのようで疲れやすいものです。玄関先でおやつを食べる場面、建物の前まで出られた場面を短い動画でクンクンに上げておくと、投稿ごとに日付が残ります。1か月前の動画を探して今日と比べれば、どれだけ来たかが見えます。
今日の様子を写真に残す →怖がりな子との慣らし期間は、飼い主さんが先に疲れてしまいます。何週間も玄関で足踏みしている気がして、SNSの中を楽しそうに駆け回る犬たちを見ると心が折れそうになりますよね。でも、緊張はリードを伝わって届きます。飼い主さんが「今日もだめだったらどうしよう」という気持ちで扉を開けると、その子もその空気を読むんです。だから目標をうんと低く設定するのが技術です。今日の目標は、扉の前でおやつを1個食べること。これなら毎日成功できますし、成功している飼い主さんの余裕がその子に伝わります。
このトレーニングには、他の人には分からない名場面があります。初めて扉の音に隠れなかった日、廊下でしっぽが上がった日、自分から一歩踏み出した日。そのまま通り過ぎず、記録しておいてください。写真1枚、メモ1行でいいんです。疲れた日にその記録をめくってみると、確かに前へ進んでいることが見えますから。そしていつか、何事もなく散歩できる日が来たら、その記録は世界でいちばんじんとくる成長アルバムになっているはずです。ゆっくりでいいんです。一緒に進んでいることが大切です。うちのグルム(「雲」という意味の名前です)が初めてマンションの玄関扉の外の廊下まで自分の足で出た日、私はそこでおやつをひとつあげて、すぐ家に戻りました。その日はそれで十分でした。
怖がりな子の飼い主さんたちに、どうしても伝えたいことがあります。遅いのではなく、慎重なんです。そして慎重な子が心を開く瞬間の喜びは、最初からすたすた歩けた子には与えられない種類のものです。応援しています。
この記事は一般的な情報であり、獣医学的な診断に代わるものではありません。愛犬の状態は動物病院にご相談ください。