リコールは芸ではなく、シートベルトです。リードが外れる事故、開いた玄関の扉、危険な物へ駆けて行く瞬間。そのときあの子を止めるのはただひとつ、「呼べば来る」という体に染みた習慣です。うちのグルム(「雲」という意味の名前です)がすずめを追って花壇へ突進した日、私を救ったのもこのトレーニングでした。
原理はシンプルです。名前(または「おいで」)=無条件に良いことという公式を壊さないこと。トレーニングは①室内1mで呼んで、来たら特級のおやつとお祭りのようなほめ言葉 ②距離と邪魔の要素をひとつずつ増やす ③ロングリードで屋外の練習の順で行きます。絶対のルールをひとつ。呼んで来た後に叱る、お風呂、爪切りのような嫌なことをさせると、リコールは崩れます。「呼ばれたら損」と学習しますから。
| 段階 | 環境 | 目標 |
|---|---|---|
| 1 | 室内1~3m、邪魔なし | 呼べば即来る、10回中9回 |
| 2 | 室内の別の部屋から | 見えなくても探して来る |
| 3 | 家の前、静かな屋外+ロングリード | 軽い刺激の中での成功 |
| 4 | 公園など刺激の多い場所+リード | においや他の犬より飼い主さんを選ぶ |
段階を上げる基準は、成功率9割です。そしてどの段階でも、屋外の練習はロングリード(3~10m)を着けたままやってください。リコールが完成する前のノーリードは、トレーニングではなくギャンブルです。日本でも多くの自治体の条例で、リードの装着が基本ですし。
1つ目、呼んでから嫌なことをさせること。楽しく遊んでいる子を呼んで、そのままお風呂場へ連れて行けば、次から呼びかけは「パーティー終了の合図」になります。嫌なことが必要なときは呼ばずに、自分から近づいてください。2つ目、繰り返し呼ぶこと。「おいで」を10回叫ぶ間、あの子が来なければ、その言葉は「無視してもいい音」として学習されます。一度呼んで、来なければ手をたたいたり後退の足取り(逃げるふり)で興味を引いて、来させた後にほめてください。3つ目、来ても気のないごほうび。公園のにおいと友だちをあきらめて来た子には、それだけの対価が必要です。リコールのごほうびは、いつものおやつではなく最愛の特別食で、反応も大げさに。リコールは「いつでも得する取引」であってこそ維持されます。
リコールをより頑丈にする秘密をひとつ。屋外で呼んで来た子にほめた後、「また行って遊んで」をしてあげることです。呼びかけが遊びの終わりではなく、ちょっとのチェックインだと学べば、あの子は気負いなく駆けてくるようになります。散歩中に理由もなく呼んで、おやつだけあげて帰す練習を混ぜると、本当に必要な瞬間のリコールの成功率が大きく上がります。10回のチェックインのうち9回がただの良いことなら、10回目の危機の状況でも、体が先に反応します。
遠くから呼んだとたんに駆けてくる場面は、トレーニングのハイライトです。クンクンに上げた動画には日付が残って、ご近所のわんちゃんたちのいいねが付きます。室内1メートルで始めた動画と、公園で成功した動画を並べて見れば、どれだけ来たのかひと目で見えます。
ご近所のわんちゃんに自慢する →すでに名前を呼んで叱った歴史が長くて、名前に気のない反応をしたり逃げる子なら、汚れた合図を生かそうと頑張るより、新しいリコールの単語を作るのが速いです。「コール」「オーケー」、口笛、何でも良いです。新しい単語は、生まれて一度も悪いことと結ばれたことのない白紙ですから、1段階から良いことだけ積めば大丈夫です。以後、名前は関心を引く用、新しい単語は「必ず来るべき合図」と役割を分ければ、運用がすっきりします。
玄関の扉が開いた瞬間、駐車場でリードが抜けた瞬間のために、非常用の超強力リコールをひとつ別に管理するおうちも多いです。特定の単語(またはホイッスル)には、普段食べられない伝説のおやつ(ゆでたささみのような)だけを結んで、週に1、2回だけ練習して価値を薄めない方式です。重要なのは、この合図とごほうびのルールを家族全員が共有すること。危機の瞬間にあの子のそばにいる人が誰かは、分かりませんから。リコールはひとりの技術ではなく、わが家の安全システムです。
この記事は一般的な情報であり、獣医学的な診断に代わるものではありません。愛犬の状態は動物病院にご相談ください。